京都府

苔生した佇まいが当時をしのばせる 京都・大原「寂光院」

京都・大原観光では、様々な寺院を訪れました。

その中でも特に印象的だったのが「寂光院」。平家滅亡時の壇ノ浦の合戦で亡くなった安徳天皇のお母さんで、後に建礼門院と名乗り、壇ノ浦の戦いで亡くなった安徳天皇や平家の菩提を弔ったとされるお寺です。

仙台に赴任し、昨年の7月に訪れた「定義如来西方寺」を参拝して以降、機会があれば、訪れたいと思っていました。

そこで今回は、京都・大原の奥にある「寂光院」をご紹介します。

40代で思う 平家物語の真実味

祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらは(わ)す。
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

高校時代に「古文」の時間で学習した、懐かしの一文ですな。

口語訳にすると

祇園精舎の鐘の音には、諸行無常すなわちこの世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある。
沙羅双樹の花の色は、どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという道理をあらわしている。
世に栄え得意になっている者も、その栄えはずっとは続かず、春の夜の夢のようである。
勢い盛んではげしい者も、結局は滅び去り、まるで風に吹き飛ばされる塵と同じようである。

社会人20年以上ともなると、色んな上司に仕え、酸いも甘いもまだまだですが、何となぁく感じる部分はあるというもの。

偉そうにふるまっていた上司が、降格して一担当者となり、分からない事を訪ねてくる有様に、何となく祇園精舎の鐘の声~の一文が頭をよぎります。

今から千年ほど前から、このような人の世の本質的な有様を、流れるような音で伝えきる日本語の素晴らしさ。40代を迎えた今、骨身にしみて、凄いなぁと改めて思います。

寂光院の成り立ち

「寂光院」のホームページには、このように記されています。

寂光院は天台宗の尼寺で、山号を玉泉寺といい、推古2(594)年に聖徳太子が父・用明天皇の菩提を弔うために建立されたと伝えられる。当初の本尊は、聖徳太子御作と伝えられる六万体地蔵尊であったが現存しない。
鎌倉時代に制作された旧本尊(重要文化財)は、平成12(2000)年5月9日未明に発生した火災により焼損したため、文化庁の指導を受けて財団法人美術院によって修復されて、境内奥の収蔵庫に安置されることとなり、現在は美術院によって模刻された地蔵菩薩像が本堂に安置されている。

建礼門院が建立したと思いきや、実は聖徳太子が建立したとの事。

奈良・法隆寺ならいざ知らず、まぁ様々なところで聖徳太子が登場するわけですな。しかしまぁ、京都・大原は比叡山と近いこともあり、天台宗の寺院が多いですな。

初代住持は聖徳太子の御乳人であった玉照(たまてるひめ)[敏達13(548)年に出家した日本仏教最初の三比丘尼の御一人で慧善比丘尼という]で、その後、代々高貴な家門の姫君らが住持となり法燈を守り続けてきたと伝えられるが、史料がなく詳細が分からないため、阿波内侍(あわのないし、藤原信西の息女)を第2代と位置づけている。崇徳天皇の寵愛をうけた女官であったが、出家のあと永万元年(1165)に入寺し、証道比丘尼と称した。出家以前は宮中にあった建礼門院に仕え、この草生の里では柴売りで有名な「大原女」のモデルとされている。

ちなみに「大原女」とは、

山城国大原の女子が薪を頭に載せて京の都で売ることをさす。行商たる販女の一種。小原女とも。 はじめ大原女は炭を売っていた。これは大原の地が炭の産地だったためである。しかし鎌倉時代以降、京近隣の炭の名産地は山城国小野里に移った。大原は薪で有名となり、大原女も薪や柴を売り歩くようになった。

との事。調べると、色んなことが分かりますなぁ。

苔生した門の屋根にひっそりとした佇まいが当時を偲ばせる

拝観料を支払い、早速拝観をスタート。

階段を少し上がると、境内手前右側にある門が見えてきます。その門の屋根の苔生した佇まいが、何とも言えないくらい、素晴らしい雰囲気。

その門の脇道を上り、境内に続く門をくぐると、本堂がお目見えしますが、雰囲気とは裏腹にかなり新しい印象。

本堂に上がって、「寂光院」のお母さんの説明を受けると、何と2000年に放火で前の本堂が焼失したとか。お寺に放火とは、まぁ中々あり得ない事です・・・。

本堂の西隣には、木々が生い茂った一角に、「建礼門院の住まいの跡」があります。

平家滅亡後、京都から少し離れた大原に戻った建礼門院の元へ、密かに後白河法皇が訪れたとされる「大原御行」。

諸説ありますが、一つ言えることは、後白河法皇に、人間界の六道を経験した事を伝えてという事。まぁ人間の人生、今も昔も様々あるわけで、順風満帆、右肩上がりの人生なんて、ほぼほぼ無いという事ですな。

空を見上げると、周りは木々に覆われ、太陽の光が遮られています。

都落ちした身であるなら、距離を置いて、そっとしておいてほしい、そんな思いが伝わって来るようでした。

京都・大原にある「寂光院」。機会があれば、ぜひ一度訪ねてみてください。

寂光院
■住所:京都市左京区大原草生町676
■電話番号:075-744-3341